第2章 昇格の行方
 J2第40節、アルビレックス新潟対サガン鳥栖の試合。前半早々、DF前田が退場し1点を先制された鳥栖。しかし、その4分後に貰ったPKをビスコンティが決め同点。10人で残りの75分を戦い抜いた鳥栖は価値ある勝ち点1を奪った。

 そして、この結果により大分の次節昇格の可能性が増した。もし、大宮戦で勝ち、昇格が決定したとしたらそこにはどんな自分がいるのだろうか。想像が出来ない。どんな気分になるのだろうか。

 自分自身、トリニータを追い始めたのは2001年からだ。

 友人のMは1999年から見ている。新潟の引き分けが決まった時、勇んでMに電話をした。Mはこう言った。


 「あぁ、     長かったなぁ。」


 重く感じた。

 自分自身、この1年はあっと言う間でそんなに長く感じていなかった。昨年から数えてもそんなに長くは感じていなかった。しかし、Mにはプラス2年の歴史がある。その2年はもっとも過酷で残酷な年だった。

 3位。

 勝ち点差【1】。

 それを経験しているMには大分の昇格の瞬間はどう映るのだろうか。


 1999年。2位で最終節を迎えた大分は山形と大分市営陸上競技場で戦った。背番号10番ウィルのゴールで先制した大分は1−0のまま後半ロスタイムへ。そこに潜んでいたのは己の油断。1秒の油断だった。【大分の悲劇】と称されたその試合を最後にチェ・デシクがチームを去った。

 石崎監督が絶対に昇格すると言って臨んだ2000年。最終節を3位で迎えた大分は大宮と大分市営陸上競技場で戦った。1−0と大宮を討ち、2位浦和の結果待ちとなった。逆転昇格を信じて。
 1−1の後半ロスタイム。浦和は窮地に追いやられていた。鳥栖にPKを与えてしまったのだ。そこには何かが潜んでいる。昨年、大分が演じてしまった悲劇のヒーローを浦和が演じようとしていた。キッカー、ルシアノ。大分から鳥栖へ期限付き移籍中の選手。

 試合は延長戦へ。

 PKを決めれなかったルシアノ。諦めなかった浦和。勝利の女神が微笑んだのはまたしても大分ではなかった。土橋のゴールで浦和がJ1復帰を果たした。

 2年連続で勝ち点差【1】に泣いた。

 そして、2001年。これが運命なのか宿命なのか。あと1勝で昇格決定となるはずだった仙台が甲府、鳥栖に連敗。舞台は最終節へ。他力本願。奇跡を信じて臨んだ鳥栖戦。5月に大分を解任された石崎監督が川崎を率いて、2位山形をねじ伏せた。
 ところが、大分の試合は1−1で延長戦へ。この瞬間、大分の昇格は消えた。結果、仙台が後半ロスタイムに財前のゴールで昇格した。

 そして、今年。2002年。W杯でサッカー熱が増す中、例年になく地味な補強と言われ開幕前の取材、わずかに1社。【無印大分】と言われた選手たちが快進撃を見せる。

 夢の舞台に立つまであと1勝。

 無論それ以前からのサポーターにとってはもっと長く感じていたことだろう。Mが観戦できるのは残り4試合で1試合。最終節だけだそうだ。昇格の瞬間、その場に居て欲しいと思った。だが、Mは最終節までもつれてまた昇格を逃すより、大宮で決めて欲しいと言った。

 その思いを背負って11月2日、大宮へ行く。試合終了の笛が鳴るまで何が起こるか分からない。残りの1秒まで勝利を信じて応援するだけだ。


 今年の最終節でドラマは起きない。

第1章 サポーター
 先日の新潟戦、TVで見ていてある事に気づいた。それは、サポーターの声が聞こえないと言う事だ。全く聞こえないわけではない。だが、同時刻に行われていた磐田対広島のゲームと比較すると明らかだ。J1だから人数が多い。当たり前。と思うかもしれない。しかし、大分市陸の来場者数1万3千2百17人に対して磐田スタジアムは9千8百75人と5千人程の差がある。響き渡る応援歌、太鼓の音。轟々とスタジアムが揺れるほどの声。ところが、大分市陸に聞こえるのはメインスタンドの客の野次。メガホンを叩く音、これだけだ。マイクの位置などの影響もあるだろうが酷すぎる。逆にメガホンを叩かないでじっとしていてほしいとさえ思った。

 ゴール裏は増えた。確かに増えた。でも、まだ少ない。立ち応援を強要すると苦情が出るくらいだ。まず、J1では考えられない。お金を払ってるんだから座って見るのは勝手だ。でも、違う。オーバーな例を出してみる。浦和。呆れるくらいの多さだ。ゴール裏は絶対に座る場所ではないと思い知らされる。埼玉スタジアムや駒場のゴール裏で座って観戦するにはかなりの勇気がいる。必然的にゴール裏は立ち応援をする場所となる。逆にヴェルディを見てみる。ゴール裏、少ない。少なければ声も小さく聞こえる。よって、ホームにもかかわらず相手チームのホームと化する。ゴール裏の全座席が立ち応援サポーターで埋め尽くされればどんなに素晴らしい声がスタジアムに響き渡る事だろう。

 J2降格が決まった札幌。個人的に札幌のサポーターは好きだ。理由はわからない。でも、見ていると気分がいい。素晴らしく見える。深い赤一色のゴール裏は本当に綺麗だ。見た目だけじゃない。その応援スタイルも好きだ。「コンサドーレを応援し続ける。応援できればいい。」と彼らは言う。

 傍から見れば立ってコールをしているサポーターは変な風に見えるらしい。でも、一度踏み込んだら出られない何かがそこにある。それは、ゴール裏を味わったものにしか分からない何かだ。恐らくゴール裏が減ることはない。だが、増やすのも難しい。

 いつだったか、横断幕の問題が議論されていた。賛否両論。個人的には悪いとは思わない。相手チームに敵対心を持ち、相手チームを罵倒する様なものでさえ構わないと思う。限度はあるが、バラエティに富んだ横断幕を作るのもサポーターの醍醐味だと思う。例えば、柏サポーターが掲げていた「勝訴」。何が勝訴なのか全く分からない。それでもいいと思う。面白い。そう思う。

 サポーターにもそのチームによっていろんな特色がある。質。スタイル。だが、すべてに共通して言えるのが死ぬほどそのチームが好きだと言うこと。

 横浜フリューゲルスのサポーターがフリエ復活の為に立ち上がった。何故か。甲府、水戸のサポーターがチーム存続の為に動いた。何故か。J、28チームのサポーター達。その1番前で指揮を取るサポーター。彼らは試合中、ほとんど後ろ、つまりスタンド側を向いている。何故か。


 某チームのとあるサポーターがこんなことを言っていた。「好きなだけ。だから応援しています。」


 重い腰を上げて見るべきだ。絶対にそこには素晴らしいものが待っている。